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青森地方裁判所 昭和40年(ヨ)167号 判決

債権者 青森交通労働組合

債務者 青森市

主文

本件仮処分申請を却下する。

申請費用は、債権者の負担とする。

事実

債権者代理人は、「債権者と債務者との間の別紙第一の「確認書」、同第二の「組合用務のための有給欠勤及び無給休暇に関する覚書」、同第三の「団体交渉確認書」(但し第二ないし五項を除く。)及び同第四の「給与に関する協定」による各協定が現に効力を有することを仮に定める。」との判決を求め、申請の理由として、

「一、債務者は、地方公営企業法に基き自動車運送事業を営むものであり、債権者は、右債務者の事業に従事する青森市交通部職員で組織された労働組合である。

二、債務者は、昭和四〇年五月三一日付青交管発第六一号、同第六二号書面で債権者に対し、さきに債権者と債務者との間で締結された申請の趣旨記載の協定書等による協定(以下単に「本件各協定」という。)を同年八月三一日限り解約する旨告知してきた。

三、債務者が解約告知した本件各協定は、すべて職員の労働条件に関する規定であるから、債務者がそれを改廃しようとするときは、債権者と債務者との間で昭和三九年一一月七日締結された労働協約(以下単に「昭和三九年の労働協約」という。)第三五条に基き債権者と事前に協議し、その同意を得なければならないのである。けだし、右労働協約第三五条には、「甲(債務者)は、労働条件に関する諸規定および諸制度を改廃しようとするときは、あらかじめ乙(債権者)と協議し、乙の同意を得なければならない。」旨が定められているからである。

四、しかるに、債権者は、本件各協定の改廃につき同意をしたことがないのはもちろん、債務者からこれについての協議の交渉を受けたこともない。

五、したがつて、債務者の本件各協定の改訂、廃止は、前記昭和三九年の労働協約第三五条に違反することが明らかであつて、無効である。

六、よつて、債権者は、債務者との間で本件各協定が有効であることの確認を求めるための訴えを準備しているが、債務者は、昭和四一年九月一日から本件各協定の改訂、廃止を強行し、そのまま推移すると、後に債権者が本案において勝訴判決を得ても回復することのできない損害を蒙るから、本案判決に至るまで、本件各協定が仮に有効であるとの判決を求めたく、本申請に及んだ。」

と述べ、債務者の主張に対し、

「第一、債務者は、債権者のなした本件仮処分申請には、訴訟要件の欠缺があり不適法であると主張するけれども、その理由のないことは、左のとおりである。

一、債権者が本件仮処分申請で、現に効力を有すると主張する対象は、債権者と債務者との間で締結された労働協約たる本件各協定により発生した債権者と債務者との間の権利関係である。すなわち、労働協約は、労働組合が使用者に対し所属組合員のためにその労働条件の維持、改善その他経済的地位の向上等に関して団体交渉をなし、締結するものであるから、協約の締結により、所属組合員の権利、義務が発生し、組合員個人がその義務の履行を要求しうることはもちろん、労働組合もまた協約の当事者としての地位に基き、使用者が組合員に対して負担する右協約上の義務を履行すべきこと、また使用者が右協約の効力を争うときは右協約が有効であることなどを要求し得ることは、労働協約の本質上当然である。債権者は、かかる労働協約上の権能に基づき、債務者に対し、債権者、債務者間で締結した申請の趣旨記載の労働協約による両者間の権利関係が、現に有効である、と主張するものである。

二、債務者は、地方公営企業労働関係法第八条、同法第九条により、「企業職員の権利義務は、直接協定によつて発生、存在するのではない。協定が成立すれば、地方公共団体の長その他の機関が条例、規則その他の規程を改正または廃止する義務を負い、その条例、規則その他の規程に基いて、企業職員の権利義務が生ずるのである。」したがつて、「条例及び規程の改正または廃止がなされているものについては、協定の廃止乃至変更は、仮処分の対象とはならないものである」から、本件仮処分は、不適法である、と主張する。

しかし、債権者が、本件仮処分で、現に効力を有すると主張する権利関係は、前述のごとく債権者、債務者間で締結した労働協約により発生した権利関係であり、右協約に基く条例、規則その他の規程、または右協約にてい触する条例、規則その他の規程の効力を対象とするものではない。

また、本件各協定は、その内容にてい触する規則その他の規程が存在していても、次の理由により、効力を有するものであり、かつその効力を確定する利益がある。すなわち

(一) 本件各協定のうち団体交渉確認書(別紙第三、ただし二乃至五を除く)及び給与に関する協定(同第四)の内容は、すべて規程をもつて定めるべき事項である。すなわち、地方公営企業法第三八条第三項は、地方公営企業の職員の給与の種類及び基準は条例で定める、と規定しているが、右規定で、条例をもつて定めることを要求しているのは、給与の種類及び基準で、給与の具体的支給額ではない。このことは同条同項と地方公務員法第二四条、同法第二五条を対照すれば、明らかである。しかして、給与の具体的支給額は、規程で定めるべきものであり、本件各協定のうち別紙第三、第四の各協定は、右具体的給与支給額を内容とするものである。ちなみに、青森市公営企業においては、企業職員の給与に関し「企業職員の給与の種類及び基準を定める条例」があり、同条例第二条、第一六条で、給与の種類及び支給額決定の基準を定め、具体的支給額については、すべて規程をもつて定めている。また諸手当の支給についても同様である。

(二) 規程にてい触する協定が締結された場合の地方公共団体の長、その他機関のとるべき措置については、地方公営企業労働関係法第九条が規定している。しかし、かかる場合の協定自体の効力は、協定が条例にてい触する場合の協定の効力に関する同法第八条第二項のごとき規定がないから、明白でない。しかし、規程は、内部規則たる性質を有するものであり、殊に協定の締結当事者として、その拘束を受けるべき地方公共団体及びその機関が、固有の権限で定立するものであるから、かかる規程に協定がてい触しても、それを理由に協定の効力を受けない、ということは不合理である。

(三) したがつて、地方公営企業労働関係法第八条第二項、第九条の文理解釈上、及び前述の理由から、規程に協定がてい触する場合も、協定の効力は締結と同時に発生し、その後の措置の有無に影響を受けない、と解するのが正当である。

(四) かように、協定にてい触する規程の存在にかかわらず、規程事項を内容とする協定は、協定の締結と同時に効力を有し、かつ適法な解約まで効力を持続する、と解する以上、その協定の効力を争う債務者に対し、それが有効であると主張することは必要である。

また、右第三、第四の協定については、それを内容とする昭和四〇年七月一七日「青森市交通部職員の業務手当の特例を定める規程」及び同年三月二四日「青森市交通部企業職員の給与に関する規程の一部を改正する規程」が制定されたが、右規程を、協定の存続中、廃止または改正することは、債務者が債権者に対して負う協定遵守の義務に一方的に違反するものである。

以上述べた理由より、債務者の本件仮処分は行政事件訴訟法第四四条の規定により不適法である、との主張は理由がない。また、債権者が、協定にてい触する規程の存在にかかわらず、その協定の効力を主張することは必要である。

三、本件各協約はいづれも有効である。

(一) 別紙第一の確認書

右確認書で、債権者、債務者間の実質的な権利関係を規定したものは、同確認書第四条、第七条である。第四条は企業職員が、公休と休日とが重複した日に勤務した場合には休日勤務手当と時間外手当を支給する。すなわち「企業職員の給与の種類及び基準を定める条例」第六条、第七条の手当を二重に支給する、ということである。かかる手当の支給方法は、なんら右条例にてい触するものではなく、協定が締結せられても条例の改正を要しないことは明らかである。右協定は条例で定めた手当の支給方法に関する取決めに過ぎないからである。したがつて、債務者の、右協定は、地方公営企業労働関係法第八条第二項の規定により、無効である、との主張は、理由がない。

(二) 別紙第二の「組合用務のための有給欠勤及び無給休暇に関する覚書」

右協定は、組合員が一定の組合会議に出席する場合には、それによる欠勤を、有給欠勤とする、ということを定めたものである。

(三) 別紙第三の「団体交渉確認書」、同第四の「給与に関する協定」

右二協定が、有効であることは、前記二で述べたとおりである。

四、債務者は、青森市は当事者適格を有しない、と主張する。右主張が不当であることは地方公営企業法上明らかである。

五、債権者組合が存在し、その代表者が千葉清之助であることは、次の事実により明らかである。すなわち債権者組合は、昭和三七年二月二八日第一六回定期大会において、それまでの「青森市公営企業局交通部労働組合」なる名称を現名称に変更したものであり、その現代表者である千葉清之助は、同三九年五月二一日施行の債権者組合の役員選挙において、任期二年の執行委員長に選出されたものである。同人が債権者組合の代表者として登記されていないことは認めるが、債務者は、従来から同人を債権者組合の代表者と認めて行動しており、債務者は、債権者の第三者ではないから、債務者の主張するような対抗問題は生じない。

第二、債権者は、債務者の、本案に対する主張及び抗弁に対し、次のとおり反論する。

一、本件各協定のうち、別紙第一、第二の協定書には、いずれも青森市公営企業局交通部長の記名捺印がなされているが交通部長は、第一の協定については企業局長を、第二の協定については市長を、それぞれ代理して、協定書に記名捺印したものであり、かかる協定が有効であることは明らかである。たとえ、右主張が認められないとしても、右協定は、締結後、数年間債権者、債務者間の休暇に関し、効力を有するものとして取扱われてきたものであるから、今右協定の形式的欠陥を指摘し、当初から無効である、と主張することは、当事者の信頼を無視するものであり、許されない。

二、債務者は、本件各協定の解約予告については、昭和三九年の労働協約第三五条の適用はないと主張する。しかし、本件各協定が、右三五条をふくむ昭和三九年の労働協約と別個の書面に作成されていても、右協定の内容が、債権者、債務者間の労働条件に関するものであるかぎり、右三五条が適用されることは、同条の文理解釈上も当然である。

三、労働組合法第一五条第三項、第四項は労働協約の解約手続を定めている。しかし、当事者間の労働協約に、労働条件に関する諸規定を改廃する場合の協議・同意約款がある限り、これに違反した改廃は、たとえ労働組合法第一五条の手続を経ても、無効であることは明白である。

四、債務者の、債務者は本件諸事項につき以前から債権者との間に協議を尽くしてきたが、債権者は理由なくそれに同意を拒んだ、との主張は、事実に相違する。

五、以上述べたように、債権者、債務者間で締結した本件各協定は、現在なお全部有効なものである、といわなければならない。それにもかかわらず、債務者は本件各協定は全部効力を失つたものであると主張するのであるから、債権者が、提起する右各協定の効力確認等の本案判決確定に至るまで、何らかの処置を講じなければ、いわゆる無協約状態となり、債権者は回復し難い損害を蒙ることは、明白である。したがつて、債権者は本案判決の確定に至るまで、本件各協定が、現に効力を有する、との裁判を得る必要がある。

六、債務者が「申請の理由に対する答弁及び抗弁」として主張するその余の事実関係のうち、第二の五の事実関係は認める。同第二の六の事実関係のうち、債務者が債権者に対し青森市の交通事業の再建につき充分に説明、協議を尽したことは否認する。また、債務者の交通事業が財政困難に陥つたとしても、債権者ないしその組合員の権利及び生活が犠牲にされてもよいということにはならない。右交通事業の財政状態も債務者の主張のとおりであることは争う。したがつて、債務者が主張する権利濫用の主張は理由がない。」

と述べた。

債務者代理人は、「本件仮処分申請を却下する。申請費用は、債権者の負担とする。」との判決を求め、本案前の抗弁として、

「本件仮処分申請には、次のとおりの訴訟要件の欠缺があり、右申請は、不適法である。

一、本件各協定の効力を争うことは、不適当である。すなわち民事訴訟においては、具体的な権利義務につき給付、確認ないしは形成の請求をなすべきものであつて、権利義務の発生原因たるべき契約自体の有効、無効の確認を求めることは許されない。労働協約は、個々の組合員の権利義務の発生原因であつて、権利義務自体ではない。したがつて本件申請は、不適法として却下を免れない。

二、本件仮処分は、行政事件訴訟法第四四条の規定により不適法である。すなわち、地方公営企業の職員の権利義務は、直接労働協約によつて発生、存在するものではない。労働協約が成立すれば、地方公共団体の長その他の機関が条例、規則その他の規程を改正または廃止する義務を負い、その条例、規則その他の規程に基いて、企業職員の権利義務が生ずることは、地方公営企業法第三八条第三項、第九条第二号、第一〇条、地方公営企業労働関係法第八条第一、二項、第九条の各規定より明らかである。

ところで、右の関係を本件各協定についてみると、次のとおりであるが、条例及び規程の改正又は廃止がなされているものについては、協定の廃止乃至変更は、仮処分の対象とはならないものである。

(一) 別紙第一の確認書

この確認書は、一二項から成るが、そのうち本件解約予告により失効するのは、第四項のみであつて、その他の各項は解約予告前後を通じて何ら変るところはない。

右第四項は、「公休と休日が重複する場合、更に日曜日と重複しない限りにおいて時間外勤務手当を支給する。ただし引続き欠勤途中における場合は、時間外勤務手当を支給せず欠勤日数を相殺する。」というのである。その本文の意味は、企業職員が公休と休日とが重複した日に勤務した場合には、一日の勤務に対して休日勤務手当(「企業職員の給与の種類及び基準を定める条例」第七条)と時間外勤務手当(同上第六条)とを二重支給する。換言すれば一日の勤務に対して二日分の支払いをするというのである。その違法、不合理は一目瞭然である。しかして、第四項の協定事項に基づく右給与条例の改正は行なわれず、従来は運用と予算措置によつて実施されていたのであるから、右第四項の協定が効力を生じないことは、地方公営企業労働関係法第八条第二項の規定に徴し、また従来の取扱いが違法であることは地方自治法第二〇四条の二の規定に徴して明白である。従つて、本件解約の予告は、無効な行政処分の通知にとどまるものであつて、有効な協定の解約の効力をもつものではない。

(二) 別紙第二の「組合用務のための有給欠勤及び無給休暇に関する覚書」

青森市の企業職員については、地方公務員法第三十五条の規定に基き、労働組合の組合員としては、「職務に専念する義務の特例に関する条例」第二条、第三条の規定による「もつぱら職員団体の業務に従事する場合」に限り任命権者の承認を得て、職務専念義務が免除されることとなつている。ところで別紙第二の覚書の組合用務のための有給欠勤が労働組合法第七条第三号に違反し不合理であることは明白である。更に無給休暇については、もつぱら任命権者の裁量権の変更にとどまるものであつて、別段の立法措置はなされていない。結局、有給欠勤及び無給休暇に関する協定の変更は、それのみによつては、何ら具体的な効果を伴うものではなく、任命権者の行政行為(休暇承認)をまつて始めて具体的な効果が発生するものである。従つて、協定の変更自体を停止する仮処分は失当である。

(三) 別紙第三の「団体交渉確認書」(但し二乃至五を除く)

右の協定は、「精励手当として乗務員、整備員及び交代勤務者を対象に一律月額九百円とし、勤務しない日一日につき三十円減額する。」というのである。右協定については、協定成立(昭和四〇年三月一三日)後、同年七月一九日「青森市交通部職員の業務手当の特例を定める規程」が制定された。この規程は、「企業職員の給与の種類及び基準を定める条例」第一二条所定の業務手当の支給に関する規定であつて、その内容は、右協定と全く同一である。右規程附則第二条は、「この規程は、昭和四〇年三月一三日青森市長と青森交通労働組合との間に締結した精励手当に関する労働協約の失効の時に、その効力を失う」旨の規定がある。従つて右規程は、本件解約の予告に伴い廃止されたものである。

(四) 別紙第四の「給与に関する協定」

この協定に基き、昭和四〇年三月二四日に「青森市交通部企業職員の給与に関する規程の一部を改正する規程」が公布施行された。本件解約の予告に伴い、昭和四〇年九月一日に「青森市交通部企業職員の給与に関する規程の一部を改正する規程」及び「青森市交通部就業規則の一部を改正する規則」が公布施行された。

三、債務者である青森市は、当事者適格を有しない。

かりに、前二項の各主張が認められないとするならば、本件各協定は、青森市長が公営企業の管理者の資格において債権者組合の委員長との間に締結したものであるから、青森市長を債務者とすべきものであつて、青森市は当事者適格を有しないものというべきである。

四、債権者である青森交通労働組合は存在せず、かりに存在するとしても、その代表者である千葉清之助は、代表権限を有しない。すなわち青森市交通部に勤務する職員で組織された労働組合としては、「青森市公営企業局交通部労働組合」なる名称の法人が昭和三四年一月一六日に成立し、同日青森地方法務局に登記が経由されており、右登記によると、その代表者は、赤坂定一となつている。右登記は、その後変更登記がなされていないから、債権者は、右登記を経由した法人組合と同一の労働組合とは考えられず、かりに同一のものであるとしても、その代表者たる千葉清之助は、債権者の代表権限を有しないものといわなければならない。また同人は、債権者の代表者としての登記がなされていないから、同人が債権者の代表者であることをもつて第三者である債務者に対抗することができない。」

と述べ、申請の理由に対する答弁及び抗弁として、

「第一、認否

申請の理由一及び二の事実は認める。同三の事実のうち昭和三九年の労働協約第三五条の規定が存することは認めるが、右規定の効力及び解約予告した本件各協定に対し右第三五条の効力が及ぶことは争う。なお、本件解約の予告が労働組合法第一五条の規定に照して有効であることは、後記抗弁のとおりである。同四の事実は争う。債務者は、本件各協定の諸点につき、右解約予告のはるか前から債権者に対し協議を求め、また実際に協議を行つてきたものである。同五及び六の事実はいずれも争う。

第二、債務者の主張及び抗弁

一、本件各協定のうち別紙第一及び同第二の各協定は、次の事由によりいずれも無効である。すなわち、労働組合法第一四条の規定は、労働協約の要式性を定めた強行規定であつて、法定の要式を欠く労働協約は、無効である。しかして、地方公営企業において労働協約の締結は、管理者の権限に属するところ、青森市においては、昭和二七年一一月一日から管理者である公営企業局長が置かれていたが、同三九年一月一〇日管理者が廃止され、同日以降は市長が管理者の権限を行なつて今日に至つている。したがつて、別紙第一の協定については公営企業局長の、同第二の協定については市長の各記名、押印を要するところ、単に「青森市公営企業局交通部長」の記名押印がなされているだけであり、交通部長は、公営企業の管理者ではないのみならず、対内的にも管理者の決済を得ていなかつたから、右の各協定は、労働協約として無効であるばかりでなく、単なる契約としてもその効力を有しないものである。

二、債権者は、昭和三九年の労働協約第三五条違反を唯一の根拠として債務者がなした本件各協定についての解約の無効を主張するけれども、本件各協定の解約については、右協約第三五条の規定の適用はない。すなわち右協約第三五条の規定は、当該労働協約及び直接この協約に規定されたところの「労働条件に関する諸規定および諸制度」の改廃についてのみ適用されるものであるから、いずれも右労働協約とは別個独立した協定として右労働協約の一部ないしは付属協定ではない本件各協定の解約予告については、右第三五条の規定に基く債権者との事前協議をしてその同意を得る必要は存しないのである。かりにそうでないとしても、従前の運用の慣行により、債務者は、本件各協定の改廃を債権者との事前の協議及びその同意なしに実施できたのである。

しかして、本件各協定は、いずれも期間の定めのない労働協約であるから、労働組合法第一五条の手続により当事者の一方から一方的に解約できるところ、右手続要件を具備した本件解約の予告により、本件各協定は、昭和四〇年八月三一日の経過により当然失効したものである。

三、かりに、右主張が認められないとしても、昭和三九年の労働協約は、昭和四〇年一一月七日の経過により失効したものであるから、本件各協定もこれに伴い当然失効したものと考えられる。

四、本件仮処分申請は、次により仮処分を求める必要性がない。

(一) 前記「本案前の抗弁」において述べたのと同じ理由により、かりに本件申請どおりの仮処分が認められたとしても、それによつて現段階において債権者、債務者間の法律関係に変更を生じえない。このような仮処分が必要性を欠くものであることはいうまでもない。

(二) なお、本件申請の仮処分が債権者組合及びその組合員各人に及ぼす結果は、極めて些少であり、また後日容易に補正しうるものであるから、今急いでそのような仮処分をする必要は全くない。

五、かりに、債務者の従前の主張がすべて認められないと仮定しても、本件仮処分は、次の事由により被保全権利もしくは必要性を欠くことは明白である。すなわち昭和三九年の労働協約は、昭和四〇年一一月七日の経過によつて失効するものであるところ、債務者は、失効の日の翌日たる同年同月八日づけ文書をもつて債権者に対し、「さきに昭和四〇年五月三一日づけ青交管発第六一号、第六二号をもつて同年八月三一日の経過によりすでに労働条件等に関する協定書等は、効力を失つたものである。しかるに債権者は青森地方裁判所昭和四〇年(ヨ)第一六七号仮処分申請事件を提起し、右解約の効力を争つているので、本書面をもつて予備的に本書到達の日の翌日から起算する九〇日の満了をもつて解約することを念のため予告する。」旨の通知をなした。右通知は、同日債権者に到達した。したがつて、かりに本件各協定が昭和四〇年八月三一日に失効しなかつたと仮定するも、前記予備的解約通知により昭和四一年二月六日の経過によつて失効するものであつたのであるが、同四〇年一二月二二日昭和三九年の労働協約を全般的に改正する新労働協約が債権者と債務者との間で、締結され、これにより、昭和三九年の労働協約は、同日失効したものである。よつて本件各協定の改廃が債権者の主張するごとく右労働協約第三五条の適用を受けるとしても、右労働協約自体が失効した後においては、もはや右主張を維持する根拠が失われたこととなる。

六、本件各協定の廃止は、交通事業再建のためやむなく行なわれたものである。すなわち、青森市の交通事業は昭和三五年度から赤字経営に転落したので、債務者はその再建方策を立案し、債権者と交渉を重ねてきた。しかるに逐年赤字が累増し、昭和三八年度決算においては、累積赤字が約一億四千三百万円、昭和三九年度決算見込においては、累積赤字約二億一千五百余万円となり、流動負債から流動資産を控除した額いわゆる不良債務約二億八千八百余万円に達した。そこで債務者は累積赤字および不良債務の解消について、地方公営企業再建整備要綱による国の援助に期待し、昭和四〇年度から昭和四五年度まで六事業年度の年次計画をもつて、企業経営の健全化を図るべく「青森市自動車運送事業再建計画」を策定した。その内容は、地方公営企業制度調査会の答申等、公正な意見に基づくものであつた。右再建計画は、昭和四〇年六月八日青森市議会において可決され、同年七月一日づけをもつて自治省の確認を受けた。本件各協定の改廃は、この再建計画の一環として行われたものであり、前記のとおり債権者には充分なる説明と協議とを重ねてきたにもかかわらず、債権者はその受諾を拒否したものである。したがつて、本件各協定の改廃につき債権者の同意が必要であるとしても、右のような債権者の態度は、同意権の濫用というべきであり、債務者の行なつた本件各協定の廃止をもつて違法ないし不相当と目すべき余地はない。」

と述べた。(立証省略)

理由

第一、債務者の本案前の抗弁について、判断する。

一、債務者は、本件各協定がいずれも労働協約として債権者組合の個々の組合員の権利義務の発生原因であつて、右組合員の権利義務自体ではないから、本件各協定の効力の有無の確定を求めることは許されないと主張するところ、その趣意は、本件仮処分申請が申請の利益を欠くというにあるものと解される。しかしながら、労働協約の法律効果は、個別的労働契約のうちに集約しつくされてしまうものではなく、労働組合も労働協約締結の当事者として右協約に基く権利義務の主体となるものであることは、一般に協約内容がいわゆる規範的効力を有する事項のみに限定されないことより明らかであり、そして、このことは、債権者主張の本件各協定の内容についても同断であるのみならず、その締結した労働協約中の規範的効力を有する事項についても、労働組合は、労働協約の実効性を確保するために、少くとも右協約に定められた基準を遵守すべきことを使用者に請求できる権利を有するものというべく、したがつて使用者が右協約事項の存在、効力を争うかぎり、これとの間でその存否ないしは効力の有無の確定を求めるにつき、労働組合の有する法律上の利益を否定することができないのである。債務者の右主張は、理由がない。

二、債務者は、債権者の申請にかかる本件仮処分が右の如き仮処分の排除を定めた行政事件訴訟法第四四条に触れ、許されないと主張するけれども、本件仮処分の対象は、それ自体公権力の行使に当たる行為とは関係のない本件各協定の効力であるから、同法条の適用をみる余地のないものであり、また債務者が右の主張と併せて種々主張する本件各協定の無効の点は、本案のみにかかわるものと考えられる。債務者の右主張は、理由がない。

三、債務者は、自己が債務者としての当事者適格を有せず、これを有するは、債務者の公営企業につき管理者の資格を有する青森市長である、と主張する。しかしながら、債権者は、本件各協定がいずれも地方公営企業法に基く公営企業の経営主体である地方公共団体たる債務者を使用者として、これと債権者との間で締結されたものと主張しているところ、右主張自体に失当とすべき点は存しないから、右債権者の主張上本件各協定の当事者とされる債務者に、右各協定の効力を対象とする本件仮処分申請につき、当事者適格が認められるべきは、当然である。債務者の右主張は理由がない。

四、債務者は、債権者組合の不存在及びその代表者につき代表権限の不存在を主張するけれども、債権者代表者本人尋問(第一回)の結果並にこれにより真正に成立したものと認められる疎甲第一一号証の一、二及び同疎甲第一二号証の一ないし三を総合すると、この点に関する債権者の主張事実を認めることができ、この認定に反する証拠はない。右事実によると、債権者組合が現存し、その代表者である千葉清之助に代表権限の存することは、明らかであつて、債務者の主張は、理由がない。債務者は、さらに債権者が法人である労働組合であるところ、右千葉清之助が債権者の代表者として登記されていないから、同人が債権者の代表者であることをもつて第三者である債務者に対抗することができないと主張するのであるが、労働組合法第一一条第三項の規定は、法人格を有する労働組合が一般の法人と同様の立場で財産的取引活動を行う場合に関するものであつて、法人格の有無にかかわらず労働組合がその本来の機能として果すべきことが要請されている組合活動を行う場合には関係のないものであり、他に右対抗要件として登記を必要と定めた規定はないから、この点についての債務者の主張もまた理由がない。

第二、以下、本案について判断する。

一、本件各協定中、別紙第一の協定が昭和三四年六月二五日、書面に作成され、青森市公営企業局交通部長藤林元之と青森市公営企業局交通部労働組合執行委員長宮本信雄の各肩書、記名、押印が施され、同第二の協定が同三九年一一月二〇日、書面に作成され、青森市交通部部長木幡聖哉と青森交通労働組合執行委員長千葉清之助の各肩書、記名、押印が施され、同第三の協定が同四〇年三月一三日、同第四の協定が同年三月一六日、いずれも書面に作成されたうえ青森市長千葉元江と青森交通労働組合執行委員長千葉清之助の各肩書、記名、押印が施され、いずれも成立したことについては、当事者間に争いがない。

二、債務者は、本件各協定中、別紙第一、第二の各協定については、債務者の代表者の記名押印を欠くのみならず、右の各協定に記名押印をした債務者の交通部長に代理権限を欠いていたことを事由に、その無効を主張するので、判断するに、その方式及び趣旨から公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき疎乙第一二号証並に証人木幡聖哉の証言及び債権者代表者本人尋問(第一回)の結果を総合すると、債務者においては、本件各協定中、別紙第一、第二の各協定における協定事項のような、既存労働協約中の協定事項に対する技術的細目にわたる事項についての団体交渉事務は、おおむねその代表者の最高補助者である交通部長に委任されて、これにより交通部長が部長職権処理事項として、右団体交渉に臨むとともに、労働協約を締結して、協定書に前判示のとおりその記名、押印をしてきたところ、このような協定書の方式及び交通部長の権限については、従来格別の紛議を生ずることなく、債権者と債務者との間に有効な労働協約が成立したものとして扱われてきたものであり、この点で右の別紙第一、第二の各協定においても異るところのなかつたことが一応認められる。右の事実によると、別紙第一、第二の各協定を成立させた債務者の交通部長に適法な代理権限が賦与されていたものというべきはもちろん、協定の要式についても、代理関係の的確な表示を欠く点に難がないわけではないが、他に要式上の瑕疵がなく、右代理関係の表示についても、右認定の事情のもとに考えると、この表示だけで、法が労働協約につき厳正な要式性を要求して、当事者の最終的意思を明確ならしめようとした目的を果すうえにおいて欠けるところはないものと認められるから、右の各協定につき労働組合法第一四条所定の要件の不備を理由として、右の各協定の無効を肯認しがたい。債務者の右主張は、理由がない。

三、ところで、債務者が債権者に対し、昭和四〇年五月三一日付青交管発第六一号、同第六二号書面により、本件各協定を同年八月三一日限り解約する旨の告知をしたことについては、当事者間に争いがない。債権者は、債務者の右解約告知に基く本件各協定の解約は、昭和三九年の労働協約第三五条に違反し無効であると主張するところ、債権者と債務者との間に昭和三九年の労働協約が成立し、その第三五条が債権者の主張どおりの内容であることについては、当事者間に争いがない。そこで、以下本件各協定と右昭和三九年の労働協約第三五条との関係を検討する。

四、(一) 証人木幡聖哉の証言及び債権者代表者本人尋問(第一回)の結果によつて認められる右昭和三九年の労働協約第三五条成立の経緯と右条項の文言等を勘案すると、同条に定める協議及び同意の対象には、労働条件に関するものである以上、すべての労働協約の改廃が含まれるものとして、同条が約定されたものと解釈せざるをえない。債務者は、労働協約としては、単に右第三五条の規定を有する昭和三九年の労働協約だけが右の協議及び同意の対象となるだけであると主張し、証人木幡聖哉も右主張を裏付ける事情を証言するけれども、右証言は、債権者代表者本人尋問(第二回)の結果と対比し、にわかには信用できないものというべきである。

(二) そうすると、本件各協定の改廃についても右協約第三五条の規定が働くことになるが、後記判示のとおり本件各協定のうち期間の定めのないものにつき、その廃止を債権者の同意にかからせる限度において、右協約第三五条の規定は、無効であるといわなければならない。けだし、労働組合法は、流動変化する労使関係を労働協約によつて長期間固定化する弊害を除くため、第一五条の規定を設け、期間の定めがない労働協約については、同条第四項の予告期間をおく限り、何時でも解約することができる旨定めているのに、右協約第三五条の規定にあるようにその廃止を労働協約の一方の当事者の同意にかからせることを是認するにおいては、右労働協約を一方の当事者の意思で何時までも存続させることができる結果となり、前記労働組合法の規定の趣旨を没却することになるからである。

(三) しかして、本件各協定の協定書に期間の定めが明記されていないことは、原本の存在及びその成立に争いのない疎甲第一号証、成立に争いのない同第二ないし四号証により一応これを認めることができるから、本件各協定において期間の定めのあつたことを認めるに足る他の事情が疎明せられない限り、右の各協定には期間の定めがなかつたものと推認するほかはない。

1  まず別紙第一の協定をみるに、右協定は、前判示のとおり、昭和三九年の労働協約(これに期間の定めがあることは、成立に争いのない疎甲第八号証により明らかである。)の成立の数年前に成立したものであることの一事に徴しても、右昭和三九年の労働協約の付属協定と認める余地はなく、他に右協定につき期間の定めがあつた事情を疎明すべき何らの資料もないから、右協定には、期間の定めがないものと認めなければならない。

2  別紙第二の協定をみるに、前顕疎甲第二号証及び同第八号証並に証人木幡聖哉の証言及び債権者代表者本人尋問(第一回)の結果を総合すると、右協定は、昭和三九年の労働協約の締結直後、右労働協約第四条の規定において別途細目の協定の締結が予定されていたところにしたがい、前判示のとおり債務者の交通部長が部長職権処理事項として、債務者の代表者を代理して債権者との間で協定したものであることが一応認められるところ、このような右協定の成立の経緯及び右協定内容と昭和三九年の労働協約の規定との関係からみて、右協定は、右昭和三九年の労働協約の付属協定と認めるのが相当であり、したがつて、その期間は、前顕疎甲第八号証により疎明される右昭和三九年の労働協定の期間である昭和三九年一一月七日から一年(但し一年間の自働更新規定付き)に従うものと認められる。

3  別紙第三、第四の各協定をみるに、前顕疎甲第三、四号証及び同第八号証並に前記証人の証言及び債権者代表者本人尋問の結果を総合すると、給与、手当に関する事項が本件当事者間において、とりわけ重要かつ困難な団体交渉項目であつたことにかんがみ、昭和三九年の労働協約を締結するに当つてはことさらにこの事項の協定を保留して協定書中に何らの記載をせず、その後、改めて当事者間で交渉を重ねた結果、別紙第三の協定については昭和四〇年三月一三日、同第四の協定については同年同月一六日、その成立をみたが、右の両協定の協定書にも昭和三九年の労働協約との関連を推測せしめる何らの記載がなされなかつたことが一応認められる。このような右三個の協定書中の記載内容とその協定成立の経緯等からみて、右両協定は、昭和三九年の労働協約とは別個独立の労働協約で、その付属協定と認めることは困難であり、また他に右両協定の期間につき定めのあつたことを疎明すべき資料はない。かえつて、債権者代表者本人尋問(第一回)の結果及び証人木幡聖哉の証言に弁論の全趣旨を考え併せると、右両協定の締結に当つて、債権者においてはこれに期間を定めなくても昭和三九年の労働協約第三五条の規定があることにより右両協定の存続が保障されるものと考え、他方債務者においてはこれに期間を定めず、何時にても解約できる地位を保持しようと考え、それぞれの立場から、ともに右両協定に期日を定める必要を認めなかつた事情を推認することができるのである。したがつて右両協定は、期間の定めがないものと認めなければならない。

結局、本件各協定のうち別紙第二の協定を除くその余の各協定だけが期間の定めのないものというべきである。

(四) そうすると、本件各協定のうち、別紙第一及び同第三、第四の各協定は、債務者から債権者に対してなした前判示の解約告知により、昭和四〇年八月三一日限り失効したものというべく、この点についての債務者の主張は、理由があるけれども、同第二の協定は、右解約告知による失効を認める余地がないから、この点についての債務者の主張は、理由がない。

五、債務者は、本件各協定のうち別紙第二の協定が昭和三九年の労働協約の昭和四〇年一一月七日の期間経過による失効に伴い失効したと主張するところ、右債務者の主張どおり昭和三九年の労働協約が失効したことは、前顕疎甲第八号証及び証人佐藤千代吉の証言によつて一応これを認めることができ、また別紙第二の協定が昭和三九年の労働協約の付属協定とみられることは、前判示のとおりであるから、別紙第二の協定は、昭和三九年の労働協約の右期間経過による失効に伴い、失効したものといわなければならない。債務者の右主張は、理由がある。

六、してみれば、本件各協定は、債務者のその余の主張を検討するまでもなく現在いずれも失効したものであることが明らかであるから、その存続を前提とする債権者の本件仮処分申請は、理由がないものといわなければならない。

第三、よつて、本件仮処分申請を却下することとし、申請費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 村上守次 井上清 森谷滋)

(別紙)第一

確認書

公休・休暇・欠勤・日曜日が重複し、勤務しない場合の取扱いは次によるものとする。

一、休日は運輸業務の特殊性から通常の勤務日とする。

二、業務の特殊性から日曜日を特に公休日と限定しない。

三、「日曜日と休日」が重複するときは休日が消滅する。

四、「公休と休日」が重複する場合、更に日曜日と重複しない限りにおいて時間外勤務手当を支給する。ただし引続き欠勤途中における場合は、時間外勤務手当を支給せず欠勤日数を相殺する。

五、「公休と休暇」が重複するときは、その限りにおいて休暇は消滅する。ただし年次有給休暇は公休と重複しない。

六、「休日と休暇」が重複するときは、その限りにおいて休暇は消滅する。ただし年次有給休暇はこの限りでない。

七、引続き欠勤途中において、休暇が発生したときは休暇は消滅せず、その限りにおいて欠勤日数を相殺する。

八、引続き年次有給休暇中においてその他の休暇が発生したときはその限りにおいて年次有給休暇は除算する。

九、「年次有給休暇以外の休暇が二以上」重複するときは、その限りにおいて後で発生した休暇が消滅する。

十、「公休と休日と年次有給休暇」が重複するときは、更に日曜日と重複しない限り、時間外勤務手当を支給し年次有給休暇は除算する。

十一、「公休と休日と年次有給休暇以外の休暇」と重複するときは、更に日曜日と重複しない限り時間外勤務手当を支給し、休暇はその限りにおいて消滅する。

十二、この確認書中「休日」とは、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第七十八号)に定める日及び十二月二十九日から十二月三十一日まで及び一月二日から一月三日までの日をいう。

昭和三十四年六月二十五日

青森市公営企業局        交通部長  藤林元之

青森市公営企業局交通部労働組合 執行委員長 宮本信雄

(別紙)第二

組合用務のための有給欠勤および無給休暇に関する覚書

青森市(以下「甲」という。)と、青森交通労働組合(以下「乙」という。)とは、次のとおり覚書を交換する。

第一条 甲は乙の役員(専従者を除く。)および役員以外の組合員が次の組合会議に出席する場合は、有給欠勤とする。

一 都市交通定期大会  年 一回  三名  年 三名

二 同中央委員会    〃 四回  一名  〃 四名

三 同専門部会     〃 二回  一名  〃 二名

四 東北北海道地協議会 〃 一回  五名  〃 五名

五 同幹事会      〃 四回  二名  〃 八名

六 同青婦協幹事会   〃 二回  一名  〃 二名

七 同専門部会     〃十二回  一名  〃十二名

八 同労働講座     〃 一回  五名  〃 五名

計        四十一名

2 前項各号の場合の欠勤日数は原則として五日以内とし、承認にあたつては、執行委員長の書面による願出によるものとする。

第二条 甲は乙の組合員が、組合を代表し組合の諸会議に出席し、その他組合用務のため、正常な勤務に服せない場合は、業務に重大な支障をおよぼさない限り、無給休暇とする。

2 前項の場合の代表人員は一時に五人を超えないものとし、承認にあたつては執行委員長の書面による願出によるものとする。

第三条 有給欠勤および無給休暇については、昇給等の場合の勤務成績査定基準には、該当させないものとする。

第四条 この覚書は、昭和三十九年十一月二十日から適用する。

昭和三十九年十一月二十日

甲 青森市交通部   部長    木幡聖哉

乙 青森交通労働組合 執行委員長 千葉清之助

(別紙)第三

団交確認書

青森市と青森交通労働組合は昭和四十年三月十三日の団体交渉において、双方別紙の通り諸事項について解決することを確認し文書を交換する。

一、精励手当として乗務員、整備員及び交代勤務者を対象に一律月額九百円とし、勤務しない日壱日につき三十円減額する。

二、前項の実施は昭和四十年四月一日からとする。

三、第一項の対象者以外については継続交渉とする。

四、繁忙期に支給される手当については、今後支給することを前提に検討し、具体的には昭和四十年三月中に継続交渉の中で決める。

五、ワンマンカーの運行については、今後別に双方継続交渉で解決の上行うものとし、当面試乗務条件について早期に交渉を進める。

尚今後の増車運行に当つては発註事前に労使協議の上行うものとする。

昭和四十年三月十三日

青森市長           千葉元江

青森交通労働組合 執行委員長 千葉清之助

(別紙)第四

給与に関する協定

青森市(以下「甲」という。)と青森交通労働組合(以下「乙」という。)とは給与に関し、次のとおり協定する。

第一条 給料表は別表第一、別表第二のとおりとする。

第二条 初任給、昇格昇給等の基準については、次の各号のとおりとする。

一 初任給基準表   別表第三

二 等級別資格基準表 別表第四

三 職務基準表    別表第五

第三条 号給の切替等については、青森市職員の給与に関する条例及び青森市職員初任給、昇格昇給等の基準に関する規則、青森市職員初任給、昇格昇給等の基準に関する規則施行細則を準用する。

第四条 宿直手当及び日直手当は一回につき四二〇円とする。

第五条 期末手当の支給率は次のとおりとする。

六月支給の場合……給料及び扶養手当の百分の百十

十二月〃     〃        百分の二百十

第六条 奨励手当の支給率は次のとおりとする。

三月支給の場合………………給料月額の百分の四十

六月及び一二月支給の場合 〃    百分の三十

2 勤務成績による支給率は、その都度甲、乙双方で協議決定する。

第七条 この協定は、昭和三九年九月一日から適用する。ただし、第一条中別表第二については昭和四〇年四月一日から適用する。

昭和四〇年三月一六日

甲 青森市長           千葉元江

乙 青森交通労働組合 執行委員長 千葉清之助

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